料理研究家、黒川陽子。「KY-キッチン」主宰。キッチンライフの基本を含む食のあり方を研究。
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2006/11/13
大蔵ダイコン

 世田谷農業祭で購入した「大蔵ダイコン」は、世田谷特産の地ダイコンです。今日出回っている青首ダイコンに比べて大ぶりで円筒型、葉も多いダイコンです。江戸時代から世田谷・大蔵地域などで栽培され、1970年代ごろまでは盛んに栽培されていたそうです。青首ダイコンの登場に伴い、生産性などの理由から、いったんは姿を消したそうです。
 農業祭で手に入れたダイコンは、葉を除いた部分の長さが45cm、直径が10cm、重さが3.5kgという大きなダイコンでした。よく、青首ダイコンが他のダイコンを圧倒した理由の1つは、他のダイコンに比べて軽いからというのも理由のひとつだと言われていますが、ダイコン1本にもかかわらず、持って帰るのに少し苦労しました。それでも、農業祭では、販売をはじめて1時間ほとで完売したそうです。
 大蔵ダイコンは、煮くずれしにくく、煮物に大変むいていると言われます。実際、煮物にしてみると、煮くずれせず、しっかりした食感が楽しめました。煮汁もにごらないので、ダイコンのうまみが溶け込んだ煮汁を肉丼に使うなど、さまざまな利用が可能です。また、調理してみて、切ったり、皮をむいたりするのに包丁のすべりがとてもいいと思いました。世田谷の農家では、煮物に優れた素晴らしい大蔵ダイコンを絶やしてはならないということで、最近復活の取り組みを進めているそうですが、私も微力ながら、料理研究家として貢献できればと考えています。
 東京には、大蔵ダイコン以外にも、練馬、亀戸、高倉(八王子)、東光寺(日野)などの個性的で素晴らしい地ダイコンがあるそうです。いずれも、少数の農家が、絶やさないように頑張って生産し続けているそうです。大変残念なのは、そうしたダイコンの存在が、消費者に全く知られていないことです。食と農の社会的隔たりの大きさとこうした地ダイコンの存在を早急に紹介する必要性をあらためて痛感しました。

【写真:品評会に出ていた大蔵ダイコン】

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